fc2ブログ

司法書士のお仕事「明治の抵当権抹消」

田舎で司法書士をやっていると時々遭遇するのが、明治や大正、昭和初期に不動産につけられた担保権の抹消の仕事。

不動産の売買の盛んな都会ではあまりないのでしょうが、田舎では結構昔の担保権がそのまま残っていたりするんですね。

現代では、お金を返し終わったら、その担保として不動産に設定していた抵当権をすぐ抹消することが多いのですが(と言っても、結構そのままになっていることもありますが…)、昔はおおらかだったのでしょうね。

で、それが何かのきっかけで問題になり、これを抹消するにはどうしたらいいんですか?と言ったご相談になるわけです。

当事務所も今、明治に設定された抵当権の抹消を2件依頼されております。

明治のころに個人の方が、別の個人の方からお金を借りていて、その担保としてお金を借りた方の持っていた土地に抵当権を設定されおり、そのまま現在に至っている訳なんですが、その土地の現在の所有者からのご依頼です。

この場合、正攻法では、この抵当権の権利者の方、つまり明治のころにお金を貸していた方の相続人を調べあげ(当然本人は亡くなっているでしょうから)相続人の方全員から、抵当権抹消の書類にハンコを押してもらう必要がある、ということになるわけですが、それは明治から現在までの相続人ですから、枝分かれしてものすごい人数になり、話もまとまらないわけなんですね。

そこで、こういう長年放置された古い抵当権を抹消するため、簡便な抹消手続きが認められているんですね(ただし、一定の要件あり)。

どういう風にするかといいますと、借金の元金を全く返していないものとして、明治から、現在までの金利や損害金を計算し、それを元金につけて供託所に供託すれば(要は国にそのお金を預けておく)、相続人の人たちからハンコをもらわず、抵当権の抹消をすることができるという手続きなんですね。

もともと、昔の借入金ですから元金は数円とか10円とか百円とか程度なわけです。そうすると現在まで100年以上の損害金とかをつけても供託金は数百円とか数千円程度で済むわけですね。

この場合、昔の数円は今の価値だと、すごい金額になる、とか、そういうのは考えなくていいようになっています。

金利や損害金は登記簿に登記されているものをもとに計算するのですが、難しいのは現在とは定め方が違っていたりして、たまに金利「牛何頭」とか、「米何俵」とかあったりします。

今回も金利は月「1分5朱」なんて、登記されているわけなんですね。1分5朱??なんだこれ??ってなったわけです。

調べてみますと、どうもこれは割合で定めているのではなく(割合だと「割、分、厘、毛」となる)、「分」「朱」は江戸時代の通貨であるというのが分かりました。

そして、明治の初期のころに江戸の通貨の「1両」を「1円」と定めているというのも分かり、1両と4分と16朱がイコールであったというのも分かりました(何故、明治なのに江戸の通貨で金利を決めているのかは謎のままですが)。

するとですね、苦手な算数をいたしまして、月1分5朱を円に換算すると月16分の9円、元金が10円ですので、年利に換算すると年利67.5%!などという高金利になったわけです。計算間違ってなければ…。

この場合当時の法定金利で利息、損害金を計算するとなっておりまして…。。

などとと言う話をしながら今週もどうにかこうにか週末を迎えた訳なのでございます。

今年もあとわずか、頑張ります。

ではでは。

後日談

結局、法務局からの指示により「朱」は「分」の下の単位なので、1分5朱は1.5パーセントで考えていいというお話になりました(^_^;)
スポンサーサイト



最近のお仕事の傾向

知られているようであまり知られていない司法書士のお仕事。

結構、業務の範囲は広く、相続や、贈与、売買による不動産の名義変更に代表される不動産の登記手続き、会社の設立や、役員の変更、増減資、事業再生に伴う合併や会社分割の手続きに代表される会社や法人の登記手続き、時には債務整理やその他の裁判書類の作成なども行います。

また、ここ最近では高齢化社会を反映してか、判断能力の衰えたお年寄りの方の財産管理や契約の代理などを行う成年後見業務も仕事のなかに占めるウェイトが増えています。

もちろん、これらは事務所事務所によって力を入れている部門や得意分野などが異なっていたりして、売り上げに占める割合は微妙に異なっていると思います。

しかし、やはり大半の事務所は、昔から伝統的に司法書士が行ってきた不動産登記による売り上げが、その事務所全体の売り上げの7割から9割近くを占めているのではないかと思います。

先に述べたように、不動産登記で多いのは売買や相続等の手続き。これは本当に毎日のように何らかの形で相談を受けたり、書類を作ったりしています。

ところが、この売買や相続に、これまた先に述べた高齢者の成年後見業務が加わる、言わば「合わせ技」の必要な仕事がたまたまかもしれませんが、当事務所では増えております。

どんな事案かと申しますとですね、まずは、「親名義の不動産を売却したい」的な御相談がある訳ですね。

それで、お話を良く聞いてみますと、不動産の名義人であるお父さんが数年前に亡くなっていて、名義変更はせずにそのままと言うのが良くあるお話なんですね。

で、お母さんはまだ御健在で、相談してきたお子さんのほかに兄弟が一人か二人(つまり亡くなったお父さんの相続人は妻と子供が二人か三人)、みたいな感じが多いです。

この場合、不動産を売るためには、その名義をお父さんから相続人の誰かの名義に変える必要がある訳です。死んだ人は不動産の売買の契約は出来ませんからね。

じゃぁ、その名義を相続により誰の名義にするのか?ですがこれはその一家一家で色々ですね。相続人全員で法定相続分に応じ名義人になったり、誰か一人の名義に変えたり。

そして、ここまで説明してきてから問題が生じて来ることが良くあるんですね。

実はお父さんが亡くなった後、お母さんが認知症となってしまい、相続の話などが理解できる状態ではない、と言うような。

相続の手続きを行うには、関係者全員が当然のこととして、手続きに対しての理解と判断力がいる訳です。

ところが、高齢のお母さんの判断力が無いとなると、通常の方法では手続きが出来なくなってしまいます。

この場合、家庭裁判所からお母さんの成年後見人を選任してもらって成年後見人がお母さんに代わって相続の手続きをやっていくようなことになる訳ですね。

で、先ほどの様なお話の多くの場合は、相続手続き後不動産を売却処分し、売却代金からお母さんの法定相続分程度(2分の1)のお金を成年後見人が預かって管理していくことになろうかと思います。

この成年後見人ですが、一日本人の感覚としては判断力の衰えた方の身内の方がなるのが自然だと思います。

やっぱり、感覚的には身内が判断力の衰えた(多くは親)身内のお世話をする(法律行為なども含め)、と言うのが自然な流れかなと思うのです。

成年後見人は本人の財産の管理の一切を行うので、本人の通帳全部や不動産の権利書など一切を預かります。

ですので、身内以外の第三者がもし成年後見人に就任した場合、身内の人から見れば第三者に通帳から一切合財の財産関係の書類を持っていかれる訳で、気分がいいはずはないと思うんですね。

ところが最近、身内を成年後見人の候補者として申し立てを行っても、弁護士や司法書士などの第三者が家庭裁判所の職権で選ばれる事が増えているようです。

先ほどの例では、父親名義の不動産を売却したいと相談に来た子供の一人が、それまでずっとお母さんの面倒も見ているということで、相続と、売却の手続きを円滑に進めるためにも、その子供をお母さんの成年後見人の候補者にして申し立てをしたところ、他の兄弟から異議が出たりして、全く無関係の弁護士や司法書士などの専門職である第三者が選任される、と言うようなことがあるわけですね。

こうなると、その後の不動産の売買代金のお母さんの持ち分も含めて第三者がもって行って管理することになります。

実際、ワタクシもいきさつは少し違いますが、第三者として成年後見人に就任しています。

こういう背景で就任した場合、実のところ就任した側も色々気を使って大変なんですよねぇ。

高齢化で今後ますます、こういうお話は増えていくと予想されます。

こんなお仕事もやっているのですよ、と言うお話でした。







住所と地番

司法書士事務所にアシスタントとして勤めると、まずはじめに登記簿謄本の取得の仕方を仕込まれると言ってもいいと思います。

僕たちが何か書類を作成する際は最新の登記簿謄本を見ながら書類を作ることが多く、法務局で登記簿謄本を取得することは仕事のもっとも基本的で重要な事項です。

ところが、ただ単に法務局で登記簿謄本を取るだけのことではあるのですが、やっぱり慣れないと中々スムーズにいかないことが多々あるわけですね。

と言うのも、登記簿謄本を取得するためには土地の「地番」と言うのが必要になるのですね。で、この「地番」ですが、いわゆる「住所」とは違うのです。

例えば僕の事務所の住所は、「福岡県筑紫野市二日市中央5丁目14番17号」なわけですが、不動産登記簿上の地番は「福岡県筑紫野市二日市中央5丁目674番7」となっており、住所とは全く異なるわけですね。

ただし、このように住所と地番が異なっているのはある程度市街化が進んでいる地域であって、住所の表示が「何丁目何番何号」的な表示になっている地域のみです。住所の表示が「何町何番地」的なところは住所と地番が一致しているといっていいと思います(多分・・・。)

この事は一般の方はあまりご存じないので、例えばご相続の相談にお見えになったお客さんに相続する不動産の所在地を聞くとまず間違いなく住所をおっしゃるんですね。まぁ、それはそうですよね。
ところが住所を聞いても、僕たちは書類作成の前提となる登記簿謄本をとれないわけです。

そこで、住所から土地の地番を調べる必要が出てくるのですね。これは具体的にどうやっているかというと、法務局に備え付けてある「ブルーマップ」という住宅地図に土地の地番が記載された地図や住所と土地の地番の対照簿等をみたり課税明細書をみたりして調べているわけです。

ところが、地図等を見てもばっちり地番がわからないこともちょくちょくあったりして(最後はどこの法務局にも一人はいらっしゃるその地区の生き字引のようなベテランの職員に相談したり・・・)単純な業務のようですが中々そこには深い経験が必要だったりするのでございます。

レアな仕事

当方田舎の弱小司法書士事務所。

えぇ、冗談ではなくホントに吹けば飛びます・・・。

そんなワタクシの事務所にもどうしたことか外国の方を相手にする様なワールドワイドなお仕事の依頼(もっともこれまで手がけたのは海外在住の日本人か、日本の方が外国に帰化した場合の案件でしたが)があります。

現在、日本人とイギリス人の間に生まれた子(イギリス国籍、日本語分からない方)への遺言による不動産の相続登記で頭悩ませ中。

ところで、諸外国には日本の戸籍や住民票、登記制度の様な緻密な制度はありません。これらの制度はいかにも日本的な超緻密で良くできた制度だとつくづく思います。日本人が世界に誇っていい制度です(まぁ、国家に個人の家族関係と不動産の資産状況を全て把握されているという恐ろしい制度ともいえるが・・・。)

で、外国の人の場合戸籍で相続関係を調査できませんので、その国の公証役場と言うところに行ってもらい真実に相違ありませんと言う宣誓をしたうえで、自分は誰だれの相続人に間違いありません、住所はどこどこです的な事を述べてもらい、それを公証人が証明した「宣誓供述書」というものを取ってきてもらって、日本で言う戸籍謄本や住民票の代わりにする訳です。

日本人の感覚で言うと、本人が述べたことをそのまま証明したものなので内容がでたらめであったらどうするのかと心配なのですが、一応、日本のお役所である法務局も外国公証人作成の宣誓供述書に書いてあることについてはそのまま受け付けてくれます。まぁ、特に西洋においては真実に相違ないと宣誓して供述するということは日本人の考える以上に重たい意味があるのかもしれません。

話を戻しますと、この宣誓供述書ですがどういう内容のものを作ってきてもらうかというのは、こっちで考えている訳です。日本の登記の申請が問題なく通るように。

で、もちろん最初は日本語で案を作る訳ですね。今回は、戸籍や住所に相当する事項を内容に盛り込むほか、登記申請に関する委任状としても使えるように委任事項も内容に盛り込んだ原稿を作成した訳ですね。それで、さっきも書いたように登記制度って日本独特のものですから、これに使えるように宣誓供述書の文章を作っていくとどうしても、外国人には意味不明な(日本人でも登記手続きなど分からない人がほとんどなので同じく意味不明だとおもいますが・・・)文章表現になる訳です。

これをヨロヨロと多少英語のできる「全くマルチでない事務員僕のパパ」が英訳する訳ですから、ますます、イギリス人には意味不明な文章となっていく訳ですね。

しかし、ワタクシはこうして出来上がった英文の宣誓供述書の案を果敢にもイギリスの依頼人2人へ送った訳です(正しくは、日本の仲介者を通して送った)。

で、イギリスの公証人と言うのも色々見たいで、2人のうち一人が宣誓供述書を作りに行った公証役場では全くこっちの原稿通りに認証された訳です。ところが、もう一人が認証に言った公証役場では、「日本の登記の委任事項は宣誓供述書に入れる内容ではない!」とか言われたらしく、そこの部分がばっさり切られて認証されて戻ってきました。

全く、「WHY?」「何してくれるんじゃぁぁぁ・・・!!」でございます。苦労して英訳したのに。

お陰で、委任状を別途用意し、英訳して送る手間が必要でした。

まぁ、それも無事にイギリスから戻ってきたので週明けに早速法務局へ申請を行おうと思っているのですが、正直なところ果たして、スムーズに登記が完了しますかどうか、実に不安です。。









不在者の財産管理人2

少し間があきましたが、以前に途中まで書いていた不在者の財産管理人について(前の記事へ)。

不在者の財産管理人が、他の相続人と間で不動産の名義を他の相続人の名義に変更する遺産分割協議をする時には家庭裁判所の許可が必要であり、許可されるには条件があるとまで書いていた訳です。

で、この条件と言うのが、遺産分割協議の内容が不動産に対する法定相続分を失う不在者のために、それに相当する他の財産が確保される内容になっている事。

前回書いた例は、3人兄弟のうち妻も子もいない兄弟所有の不動産を、他の兄弟二人が相続しているのですが、このうち兄の方が長年行方不明で、弟の単独名義に名義変更するための遺産分割協議が出来ないので、行方不明の兄に対して不在者の財産管理人を選任してもらっている、ということでした。

この場合、法定相続分は兄、弟共に2分の1です。これを弟単独名義にするには、遺産分割協議の中身が不在者である兄に不動産の価格の2分の1相当のお金を渡す様な内容でないと、家庭裁判所が許可してくれ無いということです。

結局、兄自身の知らないところで不動産の名義が変更されているわけですから、せめて、お金で法定相続分を確保して、損をしないようにしておくためと思います。弟が好き勝手出来ないわけです。

で、受け取った法定相続分相当のお金を財産管理人が管理をしていくことになります。

さて、何故、つらつらとこのようなことを書いてきたかと言いますと、昨年の夏前から、実際にこのような案件を受けておるからでして、実際受けている案件はもっと論点が色々あり、複雑だったのですが、どうにか終結出来そうになってきました。

この案件では、紆余曲折を経て、行方不明になっている方の財産管理人に僕自身が選任され、この行方不明者の弟が僕の依頼者なのですが、依頼者から行方不明者である兄の不動産の法定相続分に該当する現金を僕が預かって管理するということで家庭裁判所の許可を得ました。

そして、このお金を預かるのと引き換えに、行方不明者に代わり僕が遺産分割協議書にハンコを押し、不動産の名義を弟の単独名義に変更する登記申請を法務局に行いました。

さて、これで遺産分割協議は無事にすんだのですが、僕にとっての問題はこれからで、定期的に行方不明者の住所の調査等を行わないといけません。

基本的に預かっているお金は本人が現れるまでか、本人の死亡が確認されるまで、ずっと保管を続けなければならず、いつまで預かることになるのかさっぱり分かりません。

もちろん、預かっているお金ですから、勝手に使うこともできないわけで(これ、横領)結構神経を使います。

ただ、実務的には財産管理人は年に1度家庭裁判所に対して、一年間の管理に対する報酬を決定してくださいというお願いをすることが出来ます。

こっちで勝手に報酬を決めたりは出来ない訳ですが、家庭裁判所にお願いをすると報酬を決定してくれます。この決定された金額を預かっているお金から引き出すことは認められています。

こうして、毎年少しずつ報酬という形で預かっているお金を減らしていき、最終的に預かり金が無くなれば、財産管理人としての業務を終了できます。

今回僕が預かったお金は、そんなに多くないので、長くはかからず管理を終了できるとは思うけれども、それでも、何年かかることやら・・・。

以上、名前は聞いたことはあるけど何をやっているか分からない、という司法書士の業務にこんな業務もあるというご紹介でした。

ながながお付き合いいただきありがとうございました。

あぁ、これ書くの疲れた・・・。

 | HOME |  »

プロフィール

daishou

Author:daishou
司法書士業務のかたわら、週末は釣りにキャンプに時々自転車にと外遊びを楽しんでおります。


カテゴリ

仕事 (271)
仕事内容紹介 (27)
久留米オフィス (5)
暇な時 (39)
自転車 (41)
ロードバイク (50)
マウンテンバイク (11)
ミニベロ (17)
ロードバイクでどこを走るか (10)
ハンディGPS (8)
ダッチオーブン (15)
その他お遊び (83)
雑感 (90)
未分類 (89)
アウトドア (45)

最新記事


最新コメント


リンク

このブログをリンクに追加する

最新トラックバック


月別アーカイブ


検索フォーム


RSSリンクの表示


ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる


QRコード

QRコード

FC2カウンター